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緑と青の勇者が起こした必然のビッグウェーブ ~2018年10月27日 ルヴァンカップ決勝 湘南ベルマーレ vs 横浜Fマリノス~
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ここ最近はジェフ千葉の試合しか観ていなくて、無性にJ1が観たくなりました。

気温も下がり、観戦環境がいい時期なこともあり、ルヴァンカップ決勝へ行きました。

チケットを買った後に、湘南ベルマーレの決勝進出が決まり、楽しみ倍増でした。

 

 

キックオフ3時間前に、最寄りの浦和美園駅に到着し、スタジアムツアーを楽しみました。

浦和レッズのホームゲームではないので、スタジアム1周できるのはいいですね。

 

DAZNになってから、Jリーグを観る機会がぐっと減りました。

そのため湘南ベルマーレも、横浜Fマリノスも2018シーズンの初観戦です。

両チームとも、個性的なサッカーをしている評判は目にしていました。

何をしてくるのか?どんな展開になるのか?とても楽しみでした。

 

ベルマーレは久しぶりのタイトルを目指す、横浜は元日・天皇杯のタイトルリベンジを目指すという分かりやすい試合でした。

両チームのサポーターがたくさん集まり、熱い雰囲気だったように感じました。

この日のマイシートは、バックスタンドのややマリノス側だったこともあり、周りはマリノスサポーターばかりでした。

そんな環境でこっそりベルマーレを応援しながら見ていました。

 

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基本のフォーメーション

ベルマーレは、1-3-4-2-1、マリノスは1-4-3-3でスタートしました。

マリノスボールの時間が長く、ベルマーレは最終ラインに5人置いていました。

青をベルマーレ、赤をマリノスとして、両チームの並びを重ねます。

 

 

青のベルマーレから見ると、センターバックの所で3対1なので+2、マリノスのボランチが余っていて-1、トップの所で1対2なので-1です。

中盤でマリノスのボランチが余るので、どう守るのか?に注目していました。

 

78分に伊藤を投入したタイミングで、マリノスが1-4-4-2に変えました。

青をベルマーレ、赤をマリノスとして、同じく両チームの並びを重ねます。

 

 

青のベルマーレから見ると、センターバックの所が3対2になり+1、トップの所は1対2のままで-1です。

センターバックの所の数的優位が少なくなり、マリノスがゴール前の迫力を出してきました。

 

7年くらい前でしょうか?Jリーグで3バックが流行りだした頃に、サッカー雑誌の記事で田坂さんが語っていた言葉が印象的でした。

正確な文章は忘れてしまいましたが、3バックの狙いの1つに、4バックの相手に対してマッチアップする相手がはっきりしないようにすることを挙げていました。

2018年現在でも、4バックの方が多数派ですので、4バックに対して優位に立つ効果はあると思います。

 

またサンフレッチェ広島を率いている城福さんは、ピッチの横幅を何分割するか?を挙げていました。

4バックの根底には、68メートルあるピッチの横幅は、最低4人いればなんとかカバーできるのではないか、という考えがあります。

(Jリーグサッカー監督 プロフェッショナルの思考法 より)

 

私はこれらの考え方を重視しています。

この試合もピッチを5分割するのか?4分割するのか?が鍵になったと思います。

 

 

マリノスボールの時に狙っていたこと

「マリノスの攻撃は特殊だ」というワードだけ知っていました。

ただ何をしているのか?は知りませんでした。

確かにJリーグでは、あまり観ないサッカーでした。

 

マリノスの狙いは、ウイングにドリブルできる選手を配置し、タッチラインに立たせます。

守っている側(今回はベルマーレ)は、ウイングをケアしたいので、ウイングバックがサイドに寄ります。

つまり最終ラインの選手間の距離が空いてしまいます。

そのギャップをインサイドハーフが使い、攻撃を組み立てます。

3トップの間に、2人のインサイドハーフが入ってくるという意味では、ピッチの横幅を5分割していると言えます。

どれだけインサイドハーフが高い位置にいられるのか?がポイントだと感じました。

 

インサイドハーフを高い位置に置くということは、後ろで時間を作るのは、最終ラインの4人とボランチの5人です。

マリノスが特殊なのは、ボールをサイドに運んだ時に、逆サイドのサイドバックが中央に絞り、ダブルボランチのようにプレーすることでした。

サイドバックがボールを持った時に、逆サイドのサイドバックが自分のポジションを守ると、最終ラインの4人が同じ直線上に並ぶことになります。(もちろん

度をつける工夫はしますが、シンプルに考えます)

2次元で考えると、センターバックとパスコースが被ります。

 

しかしマリノスのサイドバックは中央に絞り、ボランチのラインまで上がることで、もう1つパスコースを作ります。

守っている側からすると、塞がなければいけないコースが1つ増えるのは、非常に負担になります。

海外サッカーの潮流が分かりませんが、Jリーグに絞れば、ほとんど観られない組み立て方だと思います。

ジェフ千葉を観ていると、たまにやっていますが、時間を作る、ゲームを組み立てる役割を担っていません。

 

前線に5人置いて、後ろの5人で時間を作るというのは、ペトロヴィッチさんのサッカーと似たコンセプトなのかな?と感じました。

守備側が4分割しているのに、攻撃側は5分割していると、嚙み合わせが悪く攻撃側が優位に立てるパターンが多いです。

 

しかしベルマーレは最終ラインに5人置いているので、同じ5分割です。

3トップの間に入ってくるインサイドハーフをしっかり捕まえていました。

ボランチと協力しながら、インサイドハーフを誰が見るのか?が明確で、マリノスの狙いの1つを潰しました。

 

これを可能にしたのは、シャドーのポジショニングとスライドの速さでした。

マリノスが中央でボールを持った時は、縦のコースを切りサイドへパスを誘導します。

サイドへパスが出たら素早くスライドし、サイドバックへプレッシャーをかける。

マリノスのサイドバックがボールを持った時に、ベルマーレはシャドーの選手がプレッシャーに行ければ、最終ラインに5人配置し続けることができます。

それが出来なくなると、マリノスのサイドバックに対して、ウイングバックが対応することになります。

その場合は、ボランチが帰ってこない限り、最終ラインが4人になり、ベルマーレの分が悪くなる印象でした。

交代で入ったベルマーレの選手は3人ともシャドーの位置に入りました。

それくらいポジショニングとスライドの速さを重視し、守備の肝だと考えていたと思います。

「最終ラインに5人いれば、ボールを持たれても心配ない」と言っているようでした。

 

注目していたマリノスの余っているボランチですが、ベルマーレの前線の3人が上手くパスコースを切っていたように観えました。

ボランチに付くのではなく、ボールホルダーとボランチに間に常に入るイメージでした。

 

さらに前半はベルマーレの前線の選手が誘導したコースへ縦パスが出て、狙った所でプレッシャーをかけられました。

ボール際でもベルマーレの選手が優位に立っていたので、狙い通りのボール奪取ができ、カウンター攻撃につなげました。

局面で体を張って、ボールを奪い続けた選手も素晴らしかったですし、後ろの選手が狙いを定めやすいようにパスを誘導した前線の選手も素晴らしかったです。

「ゴールを守る守備」というより、「ボールを奪う守備」という色合いが濃く、観ていて楽しいサッカーでした。

 

マリノスにゴールチャンスがあったので、ゴールを奪えていたら、90分通しての印象が変わったと思います。

もっと1対1で局面を変えられれば…と思いましたが、難しかったようです。

ベルマーレの選手が素晴らしかったと言っていいと思います。

それくらい紙一重でしたので、マリノスの日ではなかったのでしょう。

 

 

ベルマーレボールの時に狙っていたこと

ウイングバックを捕まえられないことが勝敗を分けたように思います。

ベルマーレのスゴイ所は、「チャンスだ」と思ったら、ポジションに関係なく前に出られることです。

攻守の切り替えと言うと、攻→守の切り替えが語られますが、守→攻の切り替えが素晴らしいです。

1-3-4-2-1を敷くチームはありますが、両ウイングバックが前線に出るチームは少ないです。

その時々の状況を読んで、前に出られる判断と勇気はベルマーレのストロングポイントです。

 

そのストロングポイントを頭に置いて観ていると面白いと感じました。

4バックを敷くマリノスの最終ラインは4分割ですが、ベルマーレの両ウイングバックが出ると、1トップ+2シャドー+ウイングバックで5分割です。

嚙み合わせが悪く、マリノスの最終ラインの選手は、誰が誰を見るのか?不明確になりました。

ベルマーレが「縦に早く入れる」ので、一瞬で判断しなければならず、マリノスの選手のとまどいを感じました。

サッカーの基本で考えると、ボールから一番離れ、ゴールに一番離れたウイングバックを捨てなければなりません。

 

その基本は守れていたと思います。

ただベルマーレの1トップ山﨑の働きが素晴らしく、縦に入ったボールを五分以上に残しました。

残ったセカンドボールをベルマーレの選手が回収し、捨てられているウイングバックへボールを繋ぎます。

ベルマーレの選手が主導権を握った局面が多かったです。

完全に後出しの結果論ですが、ゴールを奪ったのが、ウイングバックの杉岡だったのは偶然ではないと思います。

 

前線を5分割しているベルマーレを、4分割しているマリノスが守るというのは厳しいです。

ウイング然とした選手を置いている以上、ウイングの帰陣を期待し過ぎると、チームのバランスが崩れます。

マリノスを見る時は、ベルマーレ戦に限らず、大外をどう守るのか?が鍵のように観えました。

他のチームとの対戦も観てみたいです。

 

試合の感想

湘南ベルマーレというクラブを語る上で、とても重要な日に立ち会えて良かったです。

フクアリでの6-0の衝撃から、ベルマーレに興味を持ち、常に気にしているクラブなので嬉しかったです。

毎年1試合くらいしか観戦していないですが、常に進化していると感じます。

 

 

 

準決勝のPK戦で涙を流した梅崎が印象的で、決勝・タイトルにかける意気込みでベルマーレが優位に立っていた感はあります。

特別な気持ちを出すことは、いい方向に振れることもあれば、悪い方向に振れることもあります。

この日のベルマーレは、いい方向に振れました。

局面で尽く勝てたのは、「選手の地力」と「地力以上のパワーを出せる何か」だったと思います。

 

マリノスの猛攻を受けている時に、BMWスタジアムで観た川崎フロンターレ戦を思い出していました。

フロンターレにパスを回され続けても、必死で走って守り続けた試合でした。

でも90分が終わると、ベルマーレが勝っている感動の試合として記憶しています。

 

そう言えば、ベルマーレがJ1に上がった頃に、日産スタジアムのマリノス戦も思い出しました。

ベルマーレが先行しながらも、マリノスの猛攻と個の力にやられ、90分が終わったら負けていた(確か2ー4だったかな?)試合でした。

 

必死に走って守るというコンセプトは変わっていません。

しかし「後ろが揃っていれば大丈夫」というある種の余裕を感じました。(選手・ベンチ・サポーターが、どう感じたか?は分かりませんが…)

割り切った上で、守り切れるレベルに上がったという風に映りました。

毎年のように主力選手を引き抜かれながらも、「良さを残しながら、チームとして進化する」のは難しいです。

それができる湘南ベルマーレに大きな感動と期待を感じた90分でした。

我が家から平塚が遠く、平塚駅からも遠いBMWスタジアムですが、久しぶりに行きたいと思います。

 

 

yas-miki

 

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