スタジアム観戦で、それぞれの席種を紹介する記事を書き直そうと思いました。
その作業中にふと疑問に思ったことがあります。
それは『スタジアムの方角は同じなのか?』です。
シーズンオフで暇なこともあり、Jリーグクラブのホームスタジアムを調べることにしました。
土地の制約からか?『クセ強い方角』のスタジアムがありました。
Contents
スタジアムの方角に決まりはあるのか?
自分は『メインスタンドを西側に造る』という理解でした。
サッカーに限らずスタジアムで行う競技は、午後に開催することが前提だと思います。
そこで観戦の障害になるのが太陽です。
冬なら陽が当たる分、温められるのでありがたい存在です。
しかし初夏〜秋晴の季節は敵でしかありません。
貴賓室や記者席、値段の高い席は、メインスタンドに造られます。
『メインスタンドを西日から守る』ための決まりだと思っていました。
アメリカンフットボールでは、ゴール方向にダイレクトな攻撃を『ノースサウスフットボール』と呼びます。
そのためアメリカのスタジアムも同じ思想なのかな?と思っていました。
JFAのスタジアム標準という資料
今回スタジアムの方角を調べていると、JFA(日本サッカー協会)の『スタジアム標準』という資料を見つけました。
76ページに渡る資料の冒頭には、『スタジアム標準』の目的が書かれています。
本スタジアム標準は、日本サッカー協会が 2002 年に発表した「スタジアム標準」をもとに、FIFA(国際サッカー連盟)が提示した「サッカースタジアム技術的推奨及び要件」を踏まえ、スタジアムのあるべき姿を示したものです。
この『スタジアム標準』の第3章2項には、『フィールドの向き』が記載されています。
フィールドの方角は、太陽の位置や日常の風向きを考慮に入れた上で、決定する必要があります。特に選手・観客・関係者及びテレビカメラが太陽光線を直視しないですむように方角の決定をすることが重要であり、ゴールポストに相対する方向は南北、メインスタンドを西側に設定することが望まれます。
『太陽光がポイントになって、メインスタンドが西側』という結論でした。
自分の持っていたなんとなくの知識が、はっきり記載されていて、納得できました。
この原則に沿って、Jリーグのスタジアムを調べてみました。
スタジアム方向の調べ方
至って原始的な方法です。
Jリーグ公式ホームページで、各クラブのホームスタジアムと書かれているスタジアムが対象です。
そのスタジアムをGoogleマップで表示させて調べました。
常に北が上になるように表示させたので、地図上では上が北、下が南、左が西、右が東となります。
ただ縮尺はバラバラです。
今回の疑問解消には、メインスタンドの方角が分かれば完了です。
この地図に『メインスタンドの位置』と『ゴールポストに相対する方向』を書き入れました。
国立競技場を例にします。
Googleマップの地図をスクリーンショットします。
次に『メインスタンドの場所』と『ゴールポストに相対する方向の矢印』を書き入れます。
メインスタンドから見て左側のゴールに向かって矢印をつけました。
この矢印が『何度傾いているか?』を調べました。
『スタジアム標準』に沿えば、傾き0°が理想と言えます。
矢印を書くのは手動なので、角度もざっくりなのはご了承ください。
ちなみに国立競技場は20°傾いています。
スタジアムの方角を8方位で分類するのであれば、矢印の角度は45°刻みになります。
ー22.5°~22.5°は、矢印が『おおよそ北向き』と言えます。
つまり8方位で考えるのであれば、国立競技場は理想の範囲内になります。
8方位で考えた場合、傾きの範囲は表のようになります。
この手順で各スタジアムを調べました。
資料作成中に気になったこと
名古屋グランパスのホーム: パロマ瑞穂スタジアム
何も考えずに、豊田スタジアムで作業を始めた後に、Jリーグ公式ホームページを確認したらパロマ瑞穂スタジアムでした。
一応、2020年シーズンの日程表を調べました。
リーグ戦のホームゲーム17試合では、豊田スタジアムが10試合、パロマ瑞穂スタジアムが7試合でした。
ルヴァンカップのホームゲーム3試合では、全てパロマ瑞穂スタジアムでした。
合計すると、ホームゲーム20試合で、豊田スタジアムが10試合、パロマ瑞穂スタジアムが10試合になります。
なぜ収容人数の少ないパロマ瑞穂スタジアムを、ホームスタジアムをしているのか?分かりませんでした。
ブラウブリッツ秋田のホーム: あきぎんスタジアム
Jリーグ公式ホームページで確認すると、あきぎんスタジアムでした。
一方、ブラウブリッツ秋田公式ホームページのスタジアムページには、ソユースタジアムしか書いていません。
名古屋グランパスの時と同じく、2020年シーズンの日程表を調べました。
リーグ戦のホームゲーム18試合で、あきぎんスタジアムが0試合、ソユースタジアムが15試合、開催地未定が3試合でした。
なぜ開催0試合のあきぎんスタジアムがJリーグ公式に載っているのか?分かりませんでした。
こういう事例を探すのが面倒だったので、Jリーグ公式ホームページを信じて、あきぎんスタジアムで調べました。
地図では分からないスタジアム
今回の手順では、Googleマップの『地図表示』を用いました。
しかし京都サンガの新スタジアム『サンガスタジアム』やFC今治の『ありがとうサービス.夢スタジアム』は地図では分かりにくかったです。
地図表示では、ピッチやスタンドが分からないのです。
例として、サンガスタジアムの地図表示です。
ピッチやスタンドが描かれていないので、方角が分かりません。
しかし『航空写真表示』にすると、位置関係が分かります。
そのため、この2例では『航空写真表示』の地図を使用しました。
航空写真表示でも分からないスタジアム
『地図表示』でも『航空写真表示』でも、スタジアムの外観が分からなかったのが、ヴァンラーレ八戸の『プライフーズスタジアム』でした。
『地図表示』と『航空写真表示』の画像を紹介します。
本当にスタジアムがあるのか?すら分かりません。
ここでは、スタジアムの公式ホームページにあった施設案内図を基に、ざっくり矢印を書きました。
スタジアムの方角を調べた結果
ここからは上記手順で調べた結果を紹介します。
『スタジアム標準』では、『メインスタンドを西側に設定することが望まれます』と書かれています。
メインスタンドが西側にあると、矢印は北を指していることになります。
つまり傾きは0°が理想で、8方位で考えるとー22.5°~22.5°であれば、おおよそ北向きと言えます。
理想の方角で建設されたスタジアム
ざっくり引いた矢印ですが、傾き0°だったスタジアムを紹介します。
画像と一緒に紹介します。
ベガルタ仙台: ユアテックスタジアム仙台
浦和レッズ: 埼玉スタジアム2002
川崎フロンターレ: 等々力陸上競技場
大分トリニータ: 昭和電工ドーム大分
モンテディオ山形: NDソフトスタジアム山形
ツエーゲン金沢: 石川県西部緑地公園陸上競技場
愛媛FC: ニンジニアスタジアム
FC琉球: タピック県総ひやごんスタジアム
AC長野パルセイロ: 長野Uスタジアム
FC岐阜: 岐阜メモリアルセンター長良川競技場
FC今治: ありがとうサービス.夢スタジアム
今回調べた54スタジアムの内、11スタジアムが該当しました。
カバー率だと20.4%になります。
カテゴリー別で見れば、J1が22.2%(4/18)、J2が18.2%(4/22)、J3が18.8%(3/16)でした。
母数が少ないため、昇降格に伴う数字の変動が大きいと思います。
一応、J1のスタジアムに多いことになります。
おおよそ理想の方角で建設されたスタジアム
8方位で考えるとー22.5°~22.5°であれば、矢印はおおよそ北向きと言えます。
同じく画像と一緒に紹介します。
鹿島アントラーズ: 県立カシマサッカースタジアム(10°)
FC東京・東京ヴェルディ: 味の素スタジアム(-18°)
湘南ベルマーレ: Shonan BMWスタジアム平塚(-5°)
名古屋グランパス: パロマ瑞穂スタジアム(-5°)
ガンバ大阪: パナソニックスタジアム吹田(15°)
セレッソ大阪: ヤンマースタジアム長居(-4°)
ヴィッセル神戸: ノエビアスタジアム神戸(-7°)
栃木SC: 栃木県グリーンスタジアム(-13°)
ザスパクサツ群馬: 正田醬油スタジアム群馬(-3°)
ジェフ千葉: フクダ電子アリーナ(-10°)
ヴァンフォーレ甲府: 山梨中銀スタジアム(10°)
松本山雅FC: サンプロ アルウィン(-13°)
ジュビロ磐田: ヤマハスタジアム(2°)
京都サンガFC: サンガスタジアム by KYOCERA(-2°)
ファジアーノ岡山: シティライトスタジアム(-4°)
徳島ヴォルティス: 鳴門・大塚スポーツパーク ポカリスエットスタジアム(2°)
アビスパ福岡: ベスト電器スタジアム(15°)
Vファーレン長崎: トランスコスモススタジアム長崎(-4°)
ヴァンラーレ八戸: プライフーズスタジアム(ー3°)
いわてグルージャ盛岡: いわぎんスタジアム(2°)
ブラウブリッツ秋田: あきぎんスタジアム(15°)
福島ユナイテッドFC: とうほう・みんなのスタジアム(2°)
SC相模原: 相模原ギオンスタジアム(-10°)
カターレ富山: 富山県総合運動公園陸上競技場(-14°)
藤枝MYFC: 藤枝総合運動公園サッカー場(-7°)
アスルクラロ沼津: 愛鷹広域公園多目的競技場(-13°)
ガイナーレ鳥取: とりぎんバードスタジアム(15°)
カマタマーレ讃岐: Pikaraスタジアム(-22°)
鹿児島ユナイテッドFC: 白波スタジアム(-5°)
54スタジアムの内、29スタジアムが該当しました。
先程の傾き0°のスタジアムと併せると、今回調べた54スタジアムの内、40スタジアムが該当しました。
カバー率だと74.1%になります。
Jリーグの3/4のスタジアムは、『スタジアム標準』に則していると言えるかもしれません。
カテゴリー別で見れば、J1が61.1%(11/18)、J2が72.7%(16/22)、J3が87.5%(14/16)でした。
先程の傾き0°のスタジアムとは異なり、下位カテゴリーの方が多くなっています。
少しズレた方角で建設されたスタジアム
8方位で考えると、次は矢印が北東・北西を向いていることになります。
傾きは、北東(22.5°~67.5°)と北西(ー22.5°~ー67.5°)です。
同じく画像と一緒に紹介します。
コンサドーレ札幌: 札幌ドーム(35°)
札幌ドームの場合は太陽光を考慮する必要がないので、あまり意味はないかな?と思います。
横浜Fマリノス: 日産スタジアム(-40°)
横浜FC・YSCC横浜: ニッパツ三ツ沢球技場(35°)
サンフレッチェ広島: エディオンスタジアム広島(60°)
サガン鳥栖: 駅前不動産スタジアム(40°)
水戸ホーリーホック: ケーズデンキスタジアム水戸(30°)
FC町田ゼルビア: 町田GIONスタジアム(-60°)
アルビレックス新潟: デンカビッグスワンスタジアム(-27°)
ギラヴァンツ北九州: ミクニワールドスタジアム北九州(28°)
ロアッソ熊本: えがお健康スタジアム(50°)
54スタジアムの内、10スタジアムが該当しました。
累計のカバー率だと92.6%(50/54)になります。
カテゴリー別で見れば、J1が88.9%(16/18)、J2が90.9%(20/22)、J3が100.0%(16/16)でした。
先程と同じく、下位カテゴリーの方が多くなり、J3は100%になりました。
ズレた方角で建設されたスタジアム
残っているのは4スタジアムです。
傾きの少ない順に紹介します。
大宮アルディージャ: NACK5スタジアム大宮(ー95°)
清水エスパルス: IAIスタジアム日本平(-97°)
矢印が西へ向いています。
つまりメインスタンドが南側に建っています。
ピッチ上でも西日を気にするなら、メインスタンドから見て左側のエンドを取った方が優位に立てます。
また両スタジアムでは、ホームゴール裏スタンドが西側になります。
そのためアウェークラブのサポーターの方が観戦環境が厳しいです。
柏レイソル: 三協フロンテア柏スタジアム(130°)
矢印が南東へ向いているので、メインスタンドが北東に建っています。
西日の影響は、メインスタンドが一番大きそうです。
デーゲームでは、西日がTVカメラの映像にどう影響しているか?に注目して観たいです。
レノファ山口FC: 維新みらいふスタジアム(ー132°)
矢印が南西へ向いているので、メインスタンドが南東に建っています。
併設されている補助陸上競技場は、しっかりした方角です。
おそらくメインスタンドへのアクセスを考えて、この立地になった気がします。
以上の4スタジアムを見ると、公園内に他の施設も詰めて、スタジアムの長手方向が決まった感じです。
その中で、人やモノの動線を考え、道路に面している方をメインスタンドにした結果だと思います。
まとめ
スタジアム観戦に関する知識の確認として、スタジアムの方角に注目しました。
JFAには『スタジアム標準』という資料があり、『メインスタンドを西側にする』ことが記載されています。
Jリーグ公式ホームページを基に、2020年シーズンのスタジアムを調べました。
54あるスタジアムの内、40のスタジアムはおおよそ『メインスタンドが西側』でした。
中には、大きくズレた方角のスタジアムもありました。
これらのスタジアムは、公園内に建っていて、他の施設との兼ね合いがあったように感じました。
これから建てるスタジアムは『スタジアム標準』に沿うと考えられるので、レアはスタジアムになっていくと思います。
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