近年(2010年くらいから)のサッカー観戦は、戦術を論じるサッカーファンが増えたように感じています。
書店のサッカーコーナーにも、戦術に関する本が非常に多く、サッカー本の一大勢力です。
また地上波テレビでの日本代表戦でも、フォーメーションの並びが当たり前のように放送されています。
そして、実況者も戦術に関する話題を、解説者に振る回数は格段に増えました。
放送でも『戦術』、『フォーメーション』、『システム』といった言葉が市民権を得ています。
それはコアなサッカーファンでなくても、フォーメーションを理解できるようになってきたと言えるでしょう。
とは言っても、これらのワードについて、細かい定義は曖昧だとも感じます。
情報を発信する方の解釈で、使い分けがされています。
同じく独自の解釈になってしまいますが、自分の考えを整理したいと思います。
『戦術』、『フォーメーション』、『システム』の違いを整理したい方の参考になれば幸いです。
サッカー用語『フォーメーション』とは、ピッチ上に選手が並んだ形
フォーメーションは、『ピッチ上に選手が並んだ形』のことだと解釈しています。
一般的にはGKを除いた10人が、ピッチ上のどの位置に立っているのか?だと思います。
少し言葉が良くないですが、選手をピッチ上のどこに置くか?とも言えます。
通常、自ゴールから近い順に数字を並べます。
DF(ディフェンダー)ーMF(ミッドフィルダー)ーFW(フォワード)の3列で表記することが一般的です。
例えば、4-4-2や4-3-3です。
またMF(ミッドフィルダー)とFW(フォワード)を3列、全体を4列で書くこともあります。
例えば、3-4-2-1や4-2-3-1です。
4列表記の方が細かく書けると言えますが、どのように書かなければダメという決まりは無いと思います。
そしてゴールキーパーを含めて、1-4-4-2や1-4-2-3-1と書く人もいます。
自分も、1-と始める場合が多いです。
また攻撃時と守備時でフォーメーションが変わる、『可変システム』を採用するクラブが増えています。
そのような場合は、キックオフ時のフォーメーションを書いているような形になりますが、守備時のフォーメーションが基本フォーメーションとなっている印象です。
Jリーグ公式ホームページでも、予想フォーメーションを掲載していて、同じ傾向が見られます。
守備時のフォーメーションを書く理由としては、守備時は堅い守備ブロックを敷く一方で、攻撃時は曖昧なポジショニング(位置取り)になる場合が多いからでしょう。
一般的には、整然と並んだ守備側選手の間で、攻撃側選手がパスを受けることができれば、攻撃側が優位に立てるとされています。
特に多くのパスを繋ぐことでゴールに近づこうとするチームは、守備時選手の間に立つ傾向が強くなります。
サッカー用語『システム』とは、チームを機能させる設計図
選手の並びを決めるフォーメーションがあり、その上で『11人の選手をどう機能させるか?』が、サッカーでは重要です。
このどう機能させるか?は、どのように各選手が動くか?と同じ意味です。
つまり『どう並ぶのか?』がフォーメーションで、その上で『どう動くのか?』がシステムと言えます。
『戦術』というワードは、往々にしてチームでどう動くのか?というチーム戦術を指しています。
ですので、『システム』と『戦術』はイコールで結んでも構わないと思います。
自分の定義では、『フォーメーション』≠『システム』=『戦術』です。
同じフォーメーションでも、敵陣からボールを奪いにいく守り方もあれば、自陣で待ち構える守り方もあります。
同じフォーメーションでも、少ないパスでゴールに向かう攻め方もあれば、細かくパスを繋いでゴールに向かう攻め方もあります。
サイドに人数をかける攻撃もあれば、中央に人数をかける攻撃もあります。
もちろん、バランスを大切にした中庸の戦い方もあります。
自分にしっくりくる言葉は、『グラデーション』です。
つまり、同じダイレクト系であっても、アクション系、リアクション系、個人技主体的、組織的などがあり、傾向はあっても特色が独立していることは少ないのです。すべてがグラデーション。白か黒かではなくて、より白に近いか、より黒に近いかという分析になります。
同じチームを見ていても、選手の組み合わせが変われば、システムが変わり、別のチームのように戦うことも多いです。
1−4−3−3なら攻撃的、1−3−4−2−1なら守備的というように、『フォーメーション』だけでは、チームの『システム』までは辿り着かないのです。
要は、数字を並べた『フォーメーション』だけでは、サッカーの一部を見ているに過ぎないのです。
自分は、『システム』の中に、『フォーメーション』が含まれていると考えています。
『フォーメーション』と『システム』の定義は非常に曖昧
今回紹介した『フォーメーション』と『システム』の違いですが、サッカーの戦術を扱った本でも、定義が異なっています。
簡単に4例を引用します。
選手の「配置」は一般的に「システム」と呼ばれることが多いですが、「システム」という言葉は多義的です。例えば、その試合の狙い、チームがどのようにプレーするかを示した設計図を「システム」と呼ぶこともできます。よって本書では、「システム」ではなく、「配置」という言葉をメインで使用します。「フォーメーション」という言葉をイメージしていただければ良いと思いますし、本書でも「配置」と同義として使用します。
『配置』=『フォーメーション』≠『システム』=『戦術』という定義で、自分と同じ定義の仕方です。
選手から「自由」や「柔軟さ」を引き出すと同時に、その対極に位置する「役割」や「規律」を彼らに与えるものーそれが、サッカーにおけるシステムです。
『フォーメーション』に関する言及はないものの、『システム』によって選手の動きを決めるというように受け取れます。
つまり『フォーメーション』≠『システム』=『戦術』という図式でしょう。
最初に確かめるのが、システム(フォーメーション)です。4-4-2なのか3-5-2なのか、あるいは4-2-3-1なのか。私自身並び自体にはそれほど重要性を感じていませんが、その奥にある意図を探るために押さえておくのです。
『フォーメーション』=『システム』≠『戦術』=『裏にある意図』という定義だと読み取りました。
戦術は組織にとっての共通理解であり、行動指針となる。このことを理解していただくと、戦術とシステムが強い関係で結ばれていることがわかると思います。チームのポテンシャルを最大限に引き出すための「理想型」である戦術を最もわかりやすく表現したツールが4-2-3-1や4-3-3、3-5-2といったシステム(フォメーション)と考えていただいてもよいでしょう。システムとは、グラウンド上で複雑に絡み合う戦術をわかりやすく表現した”絵”といえるかもしれません。
こちらも『フォーメーション』=『システム』≠『戦術』という捉え方です。
パッと思い出せる4冊の本でも、『フォーメーション』と『システム』、『戦術』は異なる定義です。
しかし、どの本もサッカーの本質に迫る名著です。
アナリシス・アイで指摘されている『システム』という言葉が多義的であることが原因でしょう。
ですので、『フォーメーション』や『システム』という言葉の定義は重要ではないと考えてもいいと思います。
大事なのは、数字の並びだけではサッカーを理解し切れず、その奥に勝つためのエッセンス(戦術)があるということです。
自分なりの解釈ですが、参考になれば幸いです。
yas-miki(@yas-miki)