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神になって『しまった』スーパースターの素顔とは? ~ディエゴを探して~
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2020年11月25日、サッカー史に燦然と名を残したディエゴ・マラドーナさんが天へ旅立ってしまいました。

 

本書は、プロサッカー選手としての華やかな経歴や人気は、公の姿マラドーナ、私空間で見れる優しくて熱い部分をディエゴとして、複数の角度からディエゴ・マラドーナさんに迫った名著です。

タイトルからも分かるように、特にディエゴの部分をメインに扱っている点で、独自の内容です。

 

サッカー好きであっても新発見が多いと思います。

サッカー本大賞2022を受賞していて、非常に評価が高い本です。

 

 

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購入の理由

 

マラドーナさんが亡くなって間もなく発売された本で、改めてマラドーナさんを知りたいなと思っていました。

 

マラドーナさんが出場したワールドカップは、後々の映像で観ましたが、リアルタイムでプレーを観た訳ではありません

ただどんな人だったのか?は、とても興味がありました。

 

また著者の記事は、過去にサッカー誌『ワールドサッカーダイジェスト』で楽しみにしていたことも購入の要因です。

 

 

対象読者

 

恐らくディエゴ・マラドーナという選手がいたことを知っていることは大前提にあります

サッカー史で一番有名な選手と言えるので、サッカーファンであれば一度は聞いたことのあるかと思います。

 

世界的に広く知られているのはあくまでも「マラドーナ」であり、「ディエゴ」は限られた者だけが知ることを許された、愛しくてたまらない存在だった

 

本書に書かれた言葉からも『ディエゴ』に絞っている本ですので、まずは『マラドーナ』はを知っていないとなかなか理解が進まないと思います。

一方で、サッカー史でも屈指のスター選手の物語と割り切れば楽しめるかもしれないとも思います。

 

<span>藤坂ガルシア千鶴</span> (著)

 

 

ポイント1: ディエゴは優しく友達思いの『いい奴』

 

本書を読むまでは、悪い意味で奔放な性格だと思っていました。

ピッチ内のプレーはとてつもなく素晴らしい…しかしピッチ外では『お騒がせ者』…

 

似たようなイメージを持っている方も多いのではないでしょうか?

 

1982年スペインワールドカップ

1986年メキシコワールドカップ

1990年イタリアワールドカップ

1994年アメリカワールドカップ

ワールドカップの歴史は、彼のストーリーとも言えると思います。

 

それは正しく本書で言う所の『マラドーナ』でした。

 

しかしディエゴ』は、実直で真面目、友達思いの熱い『いい奴でした。

特に困っている人に手を差し伸べるエピソードの数々には、心を打たれました。

 

本書のプロローグに書かれている

ディエゴが自分の人生で何をしたかなんて、俺には興味がない。重要なのは、彼が『俺の』人生をどうしてくれたのかってことだ

という言葉通りに、多くの人の人生に沢山の良い影響と数え切れないほどの思い出を残したのだと思います。

 

個人的に、著者のことは、アルゼンチンを初め南米サッカーを日本に伝える伝道師の第一人者だと思いますが、著者もまたマラドーナに多大な影響をもらったようです。

マラドーナに影響を受けた日本人が綴るからこそ、本書を読んでいる方も、『マラドーナ』に親近感を持つのかな?と感じました。

 

なぜそんなにも周りの人に寄り添ったアクションをするのでしょうか?

 

本書を読まなければ、その理由は、後述するマラドーナである責任からだと思うでしょう。

少なくとも私は、そう考えていました。

 

しかし、本書を読むうちに、マラドーナ自身のパーソナリティーが、そうさせていると思うようにもなりました。

外からの視線もあったかと思いますが、同時に『そうしたい』からという優しい本能で動いているように感じました。

 

多くの人に愛された理由がよく分かりました。

 

 

ポイント2: 神になって『しまった』責任・苦悩

 

前述した通り、ディエゴ』評マラドーナ』評には大きな開きがあると感じました。

 

その要因として、

それまでは『天才的なサッカー選手マラドーナ』だったのが、イングランドに勝ってマルビーナス紛争の仇をとってから国の正義のために戦ったマラドーナ』になっていて、顔つきも、立ち振舞いもすっかり変わっていたんだ。結局、いつまでもそのマラドーナ』の役割を果たさなければいけないと責任を背負い続けることになった。

という言葉を使っていました。

 

また別の箇所でも

イングランド戦でゴールを決めたマラドーナであり続けようとする責任

という表現もあります。

 

とても的を射た言葉だと感じました。

そして歴史的スーパースターの苦悩を垣間見た気がしました。

 

現在のスポーツ界は商業化が進み、当時よりも大きな資金が動いていると理解しています。

ですので現在のスーパースターもまた、大きなプレッシャーと戦っているでしょう。

 

しかし、アルゼンチンというサッカー大国で、国の英雄・神となってしまったマラドーナが背負ったプレッシャーは、想像を絶する大きさだったと思います。

彼自身が『ディエゴ』と『マラドーナ』の開きを一番感じていたのかな?と思ってしまいました。

 

特にアメリカワールドカップ前のエピソードに感動しました。

 

コカイン依存症を克服し、最高のコンデションで今一度ワールドカップ優勝を目指すために行なった特別合宿である。

 

再度、大きな責任とプレッシャーと戦う決意は、崇高に感じました。

結果的には、ドーピング陽性で締め出されてしまいましたが、歴史のifとしてアメリカワールドカップの続きを見たかったな…と思いました。

 

 

まとめ

 

サッカー界のレジェンドであるマラドーナさんについて、プロとしてのキャリアではなく、少年時代を含む私空間での人となりにスポットを当てた作品でした。

 

人間味のあるエピソードばかりですし、作中の「イングランド戦でゴールを決めたマラドーナであり続けようとする責任」という言葉にスターであることの苦悩を感じることができ、とても印象的でした。

マラドーナさんのプレーを観られた世代ではありませんが、彼のことがより身近に感じられるようになりました。

 

yas-miki@yas-miki

<span>藤坂ガルシア千鶴</span> (著)

 

 

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