2014年のJ2での快進撃がなければ、
発売されていないであろう本だ
全てはタイトルの『低予算でもなぜ強い?』
というタイトルに集約されている
仮にJ2で中位をうろついていたら、こんなタイトルがつかないし、
取材にも行っていないだろう
ただ学べることの多い一冊だった
以前Shonan BMWスタジアム平塚に行った時に、
素晴らしかった点は、全てベルマーレに仕組まれたワナだったという記事を書いた
仕組まれたワナは、
この本の第6章でページを割いて紹介されていた
近年のベルマーレから感じる痛快さ、手作り感といった良さも含めて、
全てはベルマーレに仕組まれたワナだと分かった
そういうクラブをしての『湘南スタイル』を感じされてくれて、
とても勉強になった
第1章は、代表取締役会長の眞壁さんの言葉をつないで、
サッカークラブとして、地域総合型スポーツクラブとして、
基本的な考え方やオーガナイズについて書かれている
第2章は、代表取締役社長の大倉さんの言葉で、
クラブとしての考えを少し掘り下げて組織論、サッカー観を紹介している
第3章は、監督の曺さんにフォーカスして、
現場の方針や大切にしている選手像、育成について書かれている
第4章は、テクニカルディレクターの田村さんの言葉で、
ベルマーレがどういう選手をを重視して集め、
日々のモチベーションを維持してもらうか?
裏方の視点から書かれている
第5章は、選手としては湘南のレジェンドである営業本部長の坂本さんが登場して、
地域との関係を構築について書かれている
第6章は、前・事業本部長の畔柳さんが、
イベント運営の考え方、お客さんに楽しんでもらう方法を紹介している
前回の記事は、この章をフォーカスして書いたものだ
そして最終章に、サッカークラブがどうあるべきなのか?
という問いに湘南ベルマーレの答えが書かれている
どの章も面白く、勉強になったので、
ベルマーレサポーターだけでなく、
広くサッカーファンに読んでもらいたいと感じた
クラブとしてのあり方から、
選手や観客、市民への細かい気配りまで書かれているので、
勉強になって、紹介したいポイントが盛りだくさんだった
その中では『責任企業』という言葉がとても心に刺さる
個人的には、『親会社』という認識をしていて、
前面に出て大きなバックアップする企業を指している
ベルマーレには、そういった企業がなく、
市民に広くサポートしてもらって成り立っているクラブのようだ
Jリーグも裾野が広がり、似たようなクラブも多くなってきたと思う
そのようなクラブの中で、トップカテゴリーで試合をして、
最も結果を出しているのが湘南ベルマーレだと認識している
この本を読んでいると、
サッカークラブとして、何を提供していくのか?
という根本が問われていて、
それに対する明確な答えを持っているのが分かる
そしてその答えに基づいてクラブ運営にあたっている
その根本が
我々はプロチームだから、勝つことで観衆に夢と感動を提供するのは当然の義務と考えます。しかし残念ながら、勝利を手にできるチームは、1試合で1チームだけです。
という認識だ
勝てないこともあるという当たり前の事実があり、
勝てなくても心躍る試合を提供し、
試合が面白くなくても楽しい一日を過ごしてもらう
スポーツという特殊なエンターテイメント業をする上で、
重要な視点が書かれている
その視点がなければ、
リピートのお客さんをつかむことはできないと考えている
これは賛否両論あるし、とても極論な言い方になるが、
勝ち点0が続いても、スタジアムが埋まるクラブを目指すべきだ
というのが私の意見だ
もちろん3ポイントのために、ピッチで頑張らないと、
お客さんは来てくれない
それは大前提であることは分かっている
この本でも
スポーツを商いとする者の使命としてピッチでプレーする選手が躍動しないと、スタンドで観ている人には何も伝わらない。
と書かれている
それを踏まえた上で、
ピッチ上で提供できるもの以上が必要だと思っている
各国のサッカーリーグのデータでは、
選手の平均年俸とリーグの順位に相関があるとされている
そのデータが日本にも当てはまるのであれば、
ベルマーレが勝ち続けることは難しい
また平塚という首都圏の外れに位置している立地も人を集めにくい
そのためエンターテイメントとして、
ピッチ内外で価値を提供しないといけない意識が徹底されている
その意識=スキームが固まっていれば、
リピートのお客さんを獲得し続けることができる
首都圏だけだが、いろいろなクラブを見ていると、
エンターテイメントという意識が薄いなと感じることもある
前回の記事でも引用したが、
家族、恋人、友人同士で、『今度の週末は何をする?』となったときに、スポーツ以外のレジャーとの比較からベルマーレを選んでいただかなければいけないんです。
という考えがすっぽり抜けているように感じる
責任企業を持ち、運営面の危機感が少なくてすむクラブも多い
そのクラブはいい選手を獲得できるので、
いい結果を出すことで、お客さんを呼ぼうとしているように見える
それでは、どこか殿様商売の雰囲気を感じてしまう
プロ野球に比べると、非常に細かく商圏が設定されていて、
地域密着を目指しているのがJリーグだ
そのため地域愛をうたって、
おらが街のクラブにお客さんを呼び込むこともできる
それでは人口の多い街をホームタウンにしているクラブが優位になる
ベルマーレには、それもないようだった
自分たちの商圏以外から、どうお客さんを呼びこむか?
という問いへの答えが、ベルマーレの仕掛けたワナだと思っている
(平塚、茅ケ崎、藤沢の外お客さんが30%ほどらしい)
簡単にそのワナにはまった人としては、
上手い仕掛けだと思っている
親会社の顔色を窺う必要はないのだから、やれることはやってみよう。
というある種の開き直りも、発想の転換で素晴らしい
今シーズンのベルマーレのホームゲームでは、
メインスタンドで観戦をしていた
するとフラッグの無料貸し出しを、
サポーターの有志の方がやっていて、
どこからともなく歌詞カードがやって来る
このクラブとサポーターの連動も素晴らしいと思った
同じく責任企業を持たないであろう東京ヴェルディも、
それ以上の企画をしていて感動する
さらに下位のカテゴリーを探せば、
J3のFC町田ゼルビア、
JFLの横河武蔵野FCなんかでも手作り感のある雰囲気を感じた
クラブとサポーターが手を取り合って、
お客さんを呼ぼう、固定化させようという意識を感じた
スタジアムに足を運んだ人に、もう一度来てもらえるには?
という問いに対して、自分たちが動いて感動を与える答えは素晴らしい
『湘南スタイル』を語る上では、
ピッチでの頑張りに触れないわけにはいかない
誰が見てもこのチームはチャレンジしているな、と感じる回数を増やしていくことが選手の成長につながり、勝利への近道になると思ったんです。
という言葉が一番重みを持っているように感じた
それを実行するために、
選手の人間性を大事にする取り組みが紹介されていた
yas-mikiは、普段スタジアムの上段で、サッカーを俯瞰して観ている
俯瞰で観ていると、
忘れてしまいがちな選手の息づかいを思い出させてくれた
ゴール前の最後の所で頑張れるか?は、
選手の価値だと思うし、
それはその選手のメンタリティーによるものだと思っている
それは普段の練習、生活から育てていくものだと気づかされた
他のクラブがどういう取り組みをしているか?分からないが、
ベルマーレは、そこをを大事にしているように読み取った
育成の観点で語られているが、
天性とか感性を引き出すのは難しい。でも努力する、人に興味を持つ、人として誠意を持って付き合うことは、教えることができる。
と紹介されている
日々の練習、生活を通じで、努力することを続けたことが、
『湘南スタイル』をより高い位置へと押し上げたと感じた
選手の息づかいを感じることができる
数少ないクラブだと思っている
今シーズン昇格した3クラブで、唯一残留できたのも、
あきらめずに努力する、走ることをピッチで体現できたからだろう
今シーズンは3回ベルマーレを観戦したが、
全ての試合で頑張って戦う姿勢を見せて、痛快な90分だった
勝ち負けの結果の記憶もあるが、
それよりも走り続ける選手の姿が印象に残っている
前述でスポーツはエンターテインメント業という考えを紹介したが、
ピッチ上の90分がメインのコンテンツになる
勝っても負けても感動を与えるサッカーができるのは、
ベルマーレの強みだと感じている
J2からの昇格組という括りで、
どこかチャレンジャーとして観てしまったので、
感動が強いかもしれない
来シーズンは、J1定着を目指すシーズンになるはずだ
J1の勝手も分かってきて、
どんなサッカーをしてくるのか?楽しみにしている
エピローグで語られる
一生懸命やって観る人を感動させる。選手はやりきった達成感を得る。そういうことを大事にしないと日本のサッカーは永遠に変わらないと思います。
という言葉の重みを感じる
世間一般では、サッカー=代表という認識の中で、
Jリーグがどう生活に入り込んでいくのか?
という問いに対して、概念的だけど、的確な答えだと思っている
どんな人にも、Jリーグを初めて観る瞬間は、必ずある
yas-mikiは小学生の時に、万博で観た、
ベルマーレ平塚@ガンバ大阪だった
その時の感動は、何百試合と観戦していても、鮮明に覚えている
同じような経験を、どうやってしてもらえるのか?
行きついた答えが、ピッチ内外で見せる『湘南スタイル』なのだろう
初めて来た人に感動を与えて、
次も来てもらうようにする
次も感動を与えて、リピーターになってもらう
当たり前のことを愚直に続けていると、
この本を読んで、
Shonan BMWスタジアム平塚で感じたことを反芻して思った
トップチームの監督はいつかは変わるし、
フロントの顔ぶれも変わるだろう
そういった中で、
現在評価の高い『湘南スタイル』を続けて行けるのか?
Jリーグの行く末を占うようなクラブだと感じている
スタジアムまでの空間、時間の距離があるので、
シーズンシートとまでは行かなくても、
常に動向をチェックしたい
yas-miki
イベントにフォーカスした記事は、こちら