トラッキングデータコンテストで、
Jリーグのデータに埋もれた結果も出力したい
締切直前の思いつきでエントリーしたので、
余裕の選外だった
プレゼン大会も別の予定を入れてしまい不参加だった
今回思いついたのは、
Jリーグが進めている『+Qualityプロジェクト』についてデータを集めることだった
Jリーグファンでもなじみのない『+Qualityプロジェクト』は、
4つの約束でできている
①簡単に倒れない、笛が鳴るまでプレーをやめない
②リスタートを早くしよう
③選手交代を早くしよう
④異議・遅延はゼロを目指そう
これらの約束を守ることで、
『異議行為の減少』
と
『アクチュアルプレーイングタイム(以下APT)の増加』
を目指している
『異議行為の減少』については、
各クラブ、各選手の頑張り次第なので、
ファンから語るべきことは少ない
一方でAPTは、あまり注目されていないが、
個人的には重要だと思っている
このAPTは、その名の通り90分の中で、
実際にボールが動いて、試合を動かした時間である
Jリーグから配布されたJ1の1stステージのデータをチーム別に並べる
(順位が高い順に並んでいる)
(縦軸の単位はsecになっていて、以下のデータでもsec単位で表示する)
APTと順位には、大きな相関はないと考える
トップのサンフレッチェ広島は60分49秒なのに対して、
最下位のモンテディオ山形は50分1秒である
その差は、10分48秒もある
これは17試合の平均値なので、
年間34試合に換算すると、
サンフレッチェのファンは、367分12秒も長く『試合』を観ている
簡単に計算すると4試合に相当する
APTでは、プレーされているサッカーの内容には言及できないし、
縦に早いサッカーをするクラブのAPTが下がる傾向が見られる
ただ少しでも長くサッカーを楽しみたいファンからすると、
見過ごせない数字だと思っている
APTを増加させる要因とその効果について、考えていきたい
まずAPTでゴールやゴール前のシーンが増えるのか?という疑問がある
サッカーの楽しみ方は様々あり、
個人的には、中盤での神経戦も面白い
しかし分かりやすい楽しみ方は、
ゴール前のシーンを増やして、一喜一憂することだ
横軸にAPT、縦軸に試合のゴール数をプロットしてみた
全く相関は見られなかった
APTを増やしても、
ゴールの数は関係ないことになる
次に横軸にAPT、縦軸にシュート回数と30mライン進入回数をプロットしてみた
ゴールを奪うためには、
シュートを打たないと始まらない
そしてゴールにつながるシュートは、
30mラインの中で起きていると考えた
Jリーグから配られたデータで、
一番使えそうなのは、このデータだった
サッカーのようにデータを扱いにくい分析に於いて、
決定係数がどれくらいから、相関があるのか?という疑問がある
今回は0.25近くあれば、
それなりの相関があると言っていいことにした
プロットの結果、APTとシュート数には相関がなく、
直接ゴールに結びつくデータとAPTには関係がないことが分かった
APTと30mライン進入回数は、決定係数がおよそ0.25なので、
緩やかな相関が見られると言っていい
近似式から計算すると、
APTが1分伸びると、30mラインに1.2回ボールが入る
劇的な変化に感じられないかもしれないが、
前述の1試合で10分48秒の差があるという事実からすると、
13回もゴール前のシーンが増えることになる
それがシュート、ゴールに繋がってはいないが、
面白い試合になっている可能性は高い
ではAPTが増える要因とは何なのか?
それを探るために、
横軸にAPT、縦軸にパス数(パスミスも含む)と成功したパス数をプロットした
すると決定係数が0.9近くになり、
非常に高い相関が見られた
現代サッカーでは、パスを選択することが多いので、
APTが伸びれば、パス数が伸びるという結果なのかな?という結論になる
では逆のことは言えないのか?
横軸にAPT、縦軸にパス成功率をプロットしてみた
すると決定係数が0.72と落ちてしまったが、
十分相関があると考えられる
近似式から1.2%パス成功率を上げると、
APTが1分伸びることになる
つまりパスの精度を上げることが、
APTを押し上げる要因になることが言える
ちなみにパス成功率のクラブ別のデータを紹介する
最もパス成功率の高い川崎フロンターレと最も低い松本山雅FCには、
30.1%もの差がある
試合を観ていれば分かるが、
フロンターレはポゼッションサッカーで、
やり直しの横パス、バックパスが多い
対して松本山雅FCは、縦への長いボールをファーストチョイスにして、
そのセカンドボールを拾うことを、攻撃パターンにしている
パス成功率は、それぞれのクラブのスタイルによる面が大きいので、
参考程度に見ないといけないかもしれない
それでもパス成功率とAPTに高い相関があるという事実があるので、
無視できるデータではない
APTを増やしてサッカーを面白くという考えには、
『正確なパスを回せ』という結論になる
しかし、どこのエリアのパスなのか?
どんなレンジのパスなのか?
どの方向のパスなのか?というデータはない
最終ラインでゆっくり横パスを回しているだけでも、
パス成功率が上がり、APTは伸びることになる
果たして、相手ゴールに近い所で、縦パスは入っているのか?
そのパスが成功しているのか?
この検証には別データが必要になる
逆にAPTを押し下げている要因とは何なのか?と考えた
セットプレーが押し下げているのは、当たり前だ
ではどれくらい押し下げる効果があるのか?
まずはセットプレーの総数で計算してみた
横軸にAPT、縦軸にセットプレーの総数をプロットした
決定係数0.48なので、まずまず相関があると言っていい
近似式から計算すると、
1.6回セットプレーが増えると、1分APTが縮むことになる
ではどのセットプレーが一番効いているのか?
同じように横軸にAPT、縦軸に各種セットプレー回数をプロットした
どれも著しく決定係数が下がるが、
唯一スローインだけは、0.3と緩やかな相関を見せた
近似式から計算すると、
1.0回スローインを増えると、1分APTが縮むことになる
スローインが最も回数が多いセットプレーなので、
当然の帰結かもしれないが、スローインの改善が求められる
ではスローインになる要因は何か?と考えた。
そこで、クリアに注目して、
いつものように横軸にAPT、縦軸にクリアの回数をプロットした
グラフを見ると、やや相関があるようにも見えるが、
決定係数は0.14と相関があるとは言えない
そのためクリアではなく、
パスミスや競り合いの中でのボールアウトが、
スローインという結果を生んでいると考えられる
前述のようにパス成功率とAPTには相関が見られるので、
パスミスの影響が強いのかもしれない
セットプレーがAPTを押し下げているという当たり前の事実が分かり、
スローインを減らすことが重要であると分かった
しかしスローインの回数を減らすことは、非常に難しい
競り合いの中でボールアウトすることもある
パスミスに注目すれば、選手の技術力向上という長期間のスパンで
対策を練らなければならない
そこで思い出されるのは、冒頭の4つの約束だ
先程プロットした近似式を基に考えると、
仮にスローインを半分の時間で投げれば、
1回あたり30秒APTが伸びることになる
これだと制度的な対策も考えようが出てくる
簡単な意見では、フットサルのように、
リスタートに秒数制限を設けることである
世界の中でJリーグだけが導入するのも、
おかしな話かもしれない
しかしフットサルの4秒はきついかもしれないが、
10秒ほどであれば、どのクラブも対応できるのではないか?
スロワーがなかなか現れず、
投げる場所も適当で、投げるのに時間がかかる
これはJリーグでは見慣れた光景になっている
Jリーグは、マルチボールシステムなので、
よほどのことがない限り、次のボールは用意できる
それを早く投げられるのか?は、
クラブ、選手の意識に委ねられている
ここにメスを入れてみるのも、面白い一案だと思う
今回はとりあえずスタッツデータを用いて、
『+Qualityプロジェクト』について考えてみた
yas-miki
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