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真のプロ育成指導者とは? ~育成年代~
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『育成年代』という本を読みました。

 

高校生年代の育成というニッチなテーマで、日本サッカーの特徴を概観することができます。

またサブタイトルである『高体連vsJクラブユース 日本サッカーの将来を担うのはどっちだ!?』について、高体連とJリーグクラブユースの取り組みが紹介されています。

 

年に数試合ではありますが、高校生年代の試合を観る際の新しい視点を得られました。

本書の特徴やポイントだと思ったこと、感想を紹介します。

 

購入の経緯

 

サッカー関連の本を探す場合に、Amazonと大型書店を併用しています。

定期的にAmazonのおすすめ順を見たり、大型書店のサッカー関連本コーナーで新刊を見たりしています。

 

その大型書店で本書のサブタイトル『高体連vsJクラブユース 日本サッカーの将来を担うのはどっちだ!?』に興味を持ちました。

サッカーファンなら聞いたことのある対比で、様々な本やメディアで採り上げられています。

 

那須さんのYouTubeチャンネルでも採り上げられていました。

 

 

本で採り上げられると1章や1コーナー、テレビで採り上げられると1企画になると思います。

その中で本書は、育成年代を高校生年代に絞り1冊の本にしているのが特徴です。

 

類書としては、育成年代に触れた章を持つ本だと思います。

また特に高校の指導者にスポットを当てた本も類書に挙がります。

しかし1冊の本のボリュームで、育成年代を概観しながらも、個別の取り組みの詳説しているという構成は、本書の大きな特徴です。

 

育成に関わる第一人者へのインタビュー形式で、それぞれの特徴を紹介しています。

1サッカーファンとして、どんな取り組みがあり、何が起きているのか?に興味がありました。

特にテクニックのユースメンタルの高体連というイメージはなぜ生まれるのか?への答えがあればいいなと思い、読み始めました。

 

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本書の対象読者

 

先程も紹介したように、サッカーの高校生年代という超ニッチなテーマです。

 

しかしサッカーに関する知識は、さほど必要ではないという印象です

プレミアリーグやプリンスリーグ、選手権といった大会名に馴染みがないと混同するかもしれませんが、本書の流れは掴めると思います。

 

本格的にクラブチームと高校の2軸で活動しているサッカーは、他のスポーツから見ると特殊です。

だからこそ、他のスポーツにも参考になるポイントがあるのではないか?と感じました。

 

またサッカーを題材にした読み物としても読み応えがあるでしょう。

 

ポイント1: 6-3-3制を変えるのは難しい

 

帯にも書かれている高体連 vs Jクラブユースという構図で、クラブチームと学校の2軸で育成しているのは日本独自とのことです

 

本書では、欧州や南米ではクラブでサッカーをするという実情を紹介しています。

他方、アメリカンフットボールやバスケットボールの例を考えると、アメリカでは学校でサッカーという構図かもしれません。

できればアメリカの事情も紹介してくれると、面白味が増すと思いました。

 

クラブチームと高校の2つが混在する日本には、独自の構図を活かす『ジャパンウェイ』が必要としています。

 

同じことは大学の年代でも語られ、大学でサッカーをするメリットについて、他の本を引用します。

 

大学には全て揃っていると言っても過言ではありません。サッカーをする理由がある、整備されたサッカー場がある、勉強もできる、自分の1日をマネジメントする訓練を積むこともできる。プロ予備軍の育成機関としては、これほど優れた環境はないのではないでしょうか

 

 

1日のマネジメントという点は欠けるかもしれませんが、強豪校でサッカーをするメリットも近いものがあると思います

 

高体連 vs Jクラブユースという分かりやすい構図にスポットライトが当たりますが、Jクラブユースであっても6-3-3制に縛られているという指摘は新鮮でした

 

6-3-3制とは、小学校6年、中学校3年、高校3年という日本人なら当たり前に感じる区切りです。

 

高体連のサッカー部はもちろんのこと、クラブユースのチームも、ユース年代では3年間は選手にプレイする環境を提供しなければならない。これはヨーロッパや南米と比べると大きくシステムが異なります。

 

サッカーはクラブで、勉強は学校でという住み分けがはっきりしていて、クラブを移ることが上がり前のヨーロッパや南米とは異なるようです。

余程のことがない限り、高校生の3年間プレーする環境が決まる環境では、競争力が失われるという指摘です。

 

サッカーだけが6-3-3制の制約を超えて育成することは難しいと紹介されていますし、自分も同じように感じます。

だからこその『ジャパンウェイ』ですが、明確な答えは記述されていません。

 

『ジャパンウェイ』をサッカーファミリーで模索するというのが、本書の答えだと感じました。

 

ポイント2: 競争原理の高体連

 

冬の高校選手権はテレビ中継されますし、注目度が非常に高い大会です。

そのテレビ中継では、強豪校に所属する多くの部員が応援している画になりがちです

 

高校野球の甲子園のテレビ中継でも、同じ画になります。

部内で厳しい競争があるというのは、中継する側も観ている側も分かりやすいストーリーです。

100人を超える部員がいても、ピッチに立てるのは11人なのは、紛れもない事実です。

 

しかし本書では、強豪校は複数のチームに分けて、それぞれのカテゴリーでリーグ戦をしていることを強調しています。

高校選手権やインターハイだけを見ると、一握りの部員だけが試合をしている印象ですが、それを否定する形です。

 

そのチームの昇格・降格が頻繁に行われ、非常にシビアだと紹介されています。

 

結果が出せなければ、すぐに選手を入れ替えます。選手たちは昇格する喜びも感じれば、降格する悔しさも感じなければならない。

 

この競争こそが高校サッカーの1番の強みに感じました。

 

またサッカーに限らず学生スポーツには、勝利至上主義という言葉が向けられます。

ビジネス面に結びつけて、ネガティブな意味で使われている印象です。

そういったイメージに対する部分を引用します。

 

高校の部活動が教育であることは大前提なんです。一方で、教育だと言うならば、試合に勝たなくてもいいのか、負けてもいいのか。それは違うと思うんです。サッカーは勝ち負けを競うスポーツ。だからこそ、まずは試合に勝たなければいけない。

 

とても本質を突いた言葉だと思います。

 

『鍛錬』という言葉がピッタリな厳しい練習ではなく、趣味の一環としてプレーすることは否定されるものではないと思います。

それでも目の前の試合で勝利を目指すのは、スポーツの本質でしょう

 

本書での『日本サッカーの将来を担う』というテーマで考えると、やはりプロの世界で活躍できる選手に焦点を当てています。

それであれば、より目の前の勝利にこだわるのは大事でしょう。

 

こういった考え方が、『メンタルの高体連』に繋がっていることを再認識できました。

 

ポイント3: 個性を伸ばすユース

 

高体連との対比で採り上げられたのは、Jクラブユースです。

Jリーグのクラブとして、ユースに位置付けを引用します。

 

ユースはプロの興行の予備軍で、トップチームを強化するための選手育成のクラスです。ユースの選手たちは、湘南ベルマーレというJリーグのチームを強くする一員と考えられる。

 


 

また本書でも、ユースの目的にも触れています。

 

選手たちが目指すのは、あくまでトップチームに昇格することである。だからこそ、チームではなく個にスポットを当てる。

 

これらの言葉が示すように、プロ予備軍としてトップチームに繋がる選手を育成するのが明確に伝わります。

チームが勝つことより、プロの座を勝ち取れる選手を育てることが優先されています。

 

ユースの場合は、トップチーム昇格という狭き門への競争で、高体連の競争とは異なる種類の競争に感じます

 

ユースの取り組みを紹介するパートで興味深いのは、ジュニア時代(小学生)で進路の方向が決まりかねないということでした。

 

地方のクラブは、ユースでも他県や他地域から選手を加入させることもあるが、関東近郊や関西近郊の大都市圏ではジュニアユース、ユースと同じクラブで成長過程を歩む選手は増えてきている。そうした傾向を踏まえると、ユースに加入する段階で、すでにある程度の線引きはなされていることになる。むしろ子どもの進路を左右するうえで重要となるのは、ジュニア時代なのではないか。冷静に見れば、小学生から中学生に進むタイミングで才能の有無は判断されているということになる

 

ユース=エリートというイメージが先行しますが、自分の感覚ではジュニアユース(中学生)からスタートでした。

その感覚と合致した言葉ですが、驚いたのは小学生からJリーグのジュニアチームでプレーする選手が多いということでした。

 

本書では、U-20ワールドカップに出場した選手を紹介していました。

 

19年大会を戦った21人のうち、小学生からJリーグのジュニアチーム、もしくはスクールに通っていた選手は半数を超えていることからも、早い段階で質の高い指導を受けていたことが分かる。

 

断片的にしか情報を得ていないU-12の全国大会でも、Jリーグのジュニアチームが台頭している感覚は持っていましたが、かなり衝撃的なデータでした。

世間的には『お受験』という言葉が浸透してますが、サッカー界でも小学生からJリーグという流れができていることに新鮮な驚きがありました。

 

またユースの特徴として、短いスパンで指導者が変わることを紹介していました。

そのことへの受け止め方は、高体連とユースで真逆だったのが、面白かったです。

 

本書ではあまり触れられていませんでしたが、トッププロに学べるメリットは大きいと思っています。

 

自分はガンバ大阪の情報を少し追っています。

19年に引退した明神さんが、20年からジュニアユースで指導を開始するようです。

現在、トップチームの指揮を執る宮本監督も、ジュニアユースから指導を始め、ユース、U-23、トップチームとステップアップしました。

 

トッププロだから分かることは多いと思いますので、プロで生きることの意識づけはユースの特権に感じます

 

『テクニックのユース』と言われるのは、リクルート方法とトッププロの指導者にあるように思います。

 

本書を読んだ後に、改めてマンガ『アオアシ』を読むと、とても詳細にリアリティがあって面白く読めました。

 

 

本書を読んで感じたこと1: 高体連の幅の広さ

 

高校生年代のプレーヤーで、全体の99%以上は高体連でプレーしているそうです。

高体連をどの断面で切るのか?という疑問があります。

 

本書での高体連とは、全国大会常連の強豪校を指していることがほとんどです。

その強豪校も、全体から見れば1握りだと思います。

 

本書で紹介されている出場試合を増やす取り組みは、どれくらい広く届いているのか?が気になりました。

リーグ戦を導入した目的についての記述を引用します。

 

Jリーグや海外のプロチームがそうであるように、試合によって出た課題に対してチームとして取り組み、修正して、克服するという、リーグ戦を戦う上で必要なプロセスを経験させるという狙いもあった。

 

試合数を増やすということ以上の狙いがあり驚きましたし、できる限り広く浸透しているといいなと思いました。

では、どのくらいの選手がリーグ戦に出場できているのか?が気になります。

 

恐らく学校関係者の熱量によって濃淡が出るでしょうが、実情を知ってみたいと感じました。

 

本書を読んで感じたこと2: 育成のプロとは?

 

本書の優れていると思うのは、サブタイトル『高体連vsJクラブユース 日本サッカーの将来を担うのはどっちだ!?』への答えを明確にしていないことです。

どちらにもメリット・デメリットがあり、所属するチームによってグラデーションがあるので、高体連とJクラブユースでもグレーな部分が多いと感じます。

 

またサッカーファンを含めて、育成が大事であることの共通認識は深まっています。

その育成について、興味深い言葉がありました。

 

Jリーグの各クラブが、選手の育成を重要視し、スペシャルな選手を育てようと考えるならば、指導者もその年代におけるスペシャリストを育てるべきではないだろうか

 

Jリーグクラブの例を見ると、幼い年代で指導を始め、大人の年代へステップアップするという流れが一般的です。

一方、それぞれの年代特有の事情もあるのではないか?とも思います。

 

その意味で、『スペシャリスト』が必要という考えは、非常に的を射たものです。

 

では本書で扱っている高校生年代を振り返った時に、『高校生の』指導経験は、高体連の指導者に分があることが多いでしょう。

子どもと大人の狭間にいる高校生をより理解しているのは、高体連の指導者なのかもしれません。

 

滝川二高の黒田さんがヴィッセル神戸で仕事をしたり、市立船橋の朝岡さんがジェフ千葉の指導者になったりと、Jリーグクラブ側もスペシャリストを欲しているかな?と感じます

熱意と実績を持った高体連の指導者が、プロの育成年代指導者になるという流れは、とても興味深く映りました。

 

高校とクラブチームの2軸で活動している日本のメリットなのかもしれません。

 

まとめ

 

高校生年代の育成というニッチなテーマですが、とても勉強になりました。

 

高体連とクラブチームという2軸で育成している日本サッカーで、何が起きているのか?それぞれの強みについて、一段詳しくなれた気がしました。

日本サッカーの特徴を概観できますし、高体連とJクラブユースの取り組みの一端を知ることができます。

 

世界のサッカー界で日本がどんな立ち位置になれるのか?について考えると、選手育成は非常に重要なピースです。

ただのサッカーファンで当事者ではありませんが、高校生年代の試合を観る際の新しい視点を得られました

 

yas-miki@yas-miki

 

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