
過去に感じた『スタジアムの方角は同じなのか?』という疑問を解消する記事を書きました。
JFA(日本サッカー協会)が出している『スタジアム標準』という資料では、スタジアムの方角についての記載がありました。
フィールドの方角は、太陽の位置や日常の風向きを考慮に入れた上で、決定する必要があります。特に選手・観客・関係者及びテレビカメラが太陽光線を直視しないですむように方角の決定をすることが重要であり、ゴールポストに相対する方向は南北、メインスタンドを西側に設定することが望まれます。
ではJリーグクラブのホームスタジアムは、どうなっているか?を調べました。
多くのスタジアムでは、メインスタンドを西側になっていました。
海外でも同じようなスタジアムの方角に関する基準はあるのかな?と思いました。
Contents
FIFA(国際サッカー連盟)のスタジアムガイドライン
FIFAのサイトを探していると、『FIFA Football Stadiums Guidelines』というページがありました。
名前の通り、スタジアムを建設する時のガイドラインです。
Purpose
The purpose of these guidelines is to provide a global benchmark for football stadiums. Any football stadium development, anywhere in the world and at any level, can use this document to find best-practice guidance for their own project.
(意訳)
目的
ガイドラインの目的は、サッカースタジアムの世界的なベンチマークを提供することです。世界のどこでも、どんなレベルでも、世界中のサッカー スタジアム開発者は、この文書を使用して、自分のプロジェクトに対する最善の事例・ガイダンスを見つけられます。
このガイドラインでは、「2章 設計概要」の中に「2.2 向き」とう項がありました。
この項では、メインスタンドの位置(=スタジアムの向き)について書いてあります。
Main stand
Good stadium orientation should alleviate the issue of sun glare on all TV broadcasts and for those in the commentary positions, as well as those seated in the media, VIP and VVIP areas.
On the basis that these seats and the main TV camera gantry should be located in the main stand, the stadium orientation should ensure that the sun is behind the main stand at times when matches are likely to be played.
(意訳)
メインスタンド
スタジアムの向きが良ければ、すべてのテレビ放送社(解説席)、メディア、VIP、VVIPエリアで起こる「太陽のまぶしさ」の問題が軽減されるはずです。
「これらの座席」と「メインのテレビカメラ」をメインスタンドに設置する原則があり、多くの試合が行われる時間帯に、太陽がメインスタンドの後ろにあるようなスタジアムの向きにするべきです。
多くの試合が行われる時間帯は、午後です。
そして午後に太陽は南から西にありますので、メインスタンドは西にあるのが理想ということだと理解しました。
また同じ項では、一般的なスタジアムの向きについても書かれています。
Common stadium orientation
The most common orientation of a pitch/stadium is on a predominately north-south axis within the range of degrees shown in Figures 2.2.1 and 2.2.2.
If a stadium’s orientation falls within this range, it is likely to be consistent with international best practice. However, to ensure the best orientation on any given site, it is advisable that a sun path/trajectory study be undertaken.
一般的なスタジアムの向き
最も一般的なピッチ/スタジアムの向きは、だいたい南北軸上にあり、図 2.2.1 と 図 2.2.2 に書かれた角度の範囲内です。
スタジアムの向きが、この範囲内にある場合、国際的な良い事例と凡そ一致しています。ただし、スタジアムを建設する土地で最適な向きを確保するために、その土地での、太陽の軌道を調査することをお勧めします。
図 2.2.1は「北半球の好ましいメインスタンドスタンドの向き」が表示されています。
南北の軸に対して、傾きが西に45度~東に30度の範囲内であれば、理想的だと言えるということです。
JFA『スタジアム標準』では、具体的な角度が書かれていなかったので、新しい情報でした。
スタジアムの方角の調べ方
至って原始的な方法で、Googleマップを使って調べました。
常に北が上になるように表示させました。
そのため、地図上では上が北、下が南、左が西、右が東となります。(縮尺はバラバラです)
この地図に『メインスタンドの位置』と『ゴールポストに相対する方向』を書き入れました。
『ゴールポストに相対する方向』は、メインスタンドから見て右側のゴールから左側のゴールに向かって矢印をつけました。
この矢印の傾きが-45度~+30度の範囲内であれば、理想的となります。
前の記事で調べたJリーグ公式ホームページで、各クラブのホームスタジアムと書かれているスタジアムが対象です。
FIFAのStadiums Guidelinesで日本のスタジアムを見ると…
前回の記事で傾きは調べましたので、その傾きが-45度~+30度の範囲内か?を計算しました。
範囲内であれば「〇」、範囲外であれば「×」を書きました。
調べたのは66のスタジアムで、「〇」を書いたのは、55のスタジアムでした。
割合ですと、83%でした。
多くのスタジアムが、『Stadium Guidelines』に書かれた範囲内の傾きでした。
北海道コンサドーレ札幌の『大和ハウス プレミストドーム』は、ドームです。
そのためスタジアムの向きは影響がないかと思います。
「×」を書いたスタジアムは、建設から時間が経っているスタジアムが多い印象です。
新しいスタジアムを建設する時には、方角についても考慮されていることが分かりました。
世界の有名なスタジアムは?
新たな疑問は、「海外のスタジアムは、ガイダンスに書いていた向きの範囲内なのか?」です。
世界中のスタジアムを調べるのは、「まず数が多すぎる…」、「外国語なので調べるのが難しすぎる…」。
ということで、欧州5大リーグがあるイングランド、スペイン、ドイツ、イタリア、フランスで、各国2つに絞りました。
海外サッカーに詳しくない私でも思いつく有名なスタジアムにしました。
調べた際に作った画像を紹介します。
アンフィールド(リヴァプール):傾き+39°
オールド・トラッフォード(マンチェスターユナイテッド):傾き-108°
カンプノウ(バルセロナ):傾き-22°
サンティアゴ・ベルナベウ(レアルマドリード):傾きー176°
これほんまかいな…
ジュゼッペ・メアッツァ(ミラン/インテル):+21°
スタディオ・オリンピコ・ディ・ローマ(ラツィオ/ローマ)/傾きー15°
アリアンツアレーナ(バイエルンミュンヘン)/傾きー15°
ジグナル・イドゥナ・パルク(ドルトムント)/傾き+172°
これほんまかいな…
ヴェロドローム(オリンピックマルセイユ)/傾き-19°
パルク・デ・プランス(パリサンジェルマン)/傾き+34°
集計した結果は、次の通りです。
調べたのは10のスタジアムで、「〇」を書いたのは、5のスタジアムでした。
割合は50%で、日本の83%とは大きな差がありました。
レアルマドリードの『サンティア・ゴベルナベウ』やドルトムントの『ジグナル・イドゥナ・パルク』は、メインスタンドが東側にあるようです。
(「ほんまかいな…」と思い何度も調べましたが、間違っているのかもしれません。)
また日本には、傾き0のスタジアムが多くありましたが、今回調べた10つのスタジアムにはありませんでした。
建て替えが多いからなのか?、欧州は日本より緯度が高いので影響が少ないからなのか?理由は分かりません。
まとめ
スタジアムの方角に国際的な基準はあるのか?という疑問がありました。
FIFAのサイトにある『Stadium Guidelines』には、スタジアムの向きにも言及されていました。
「メインスタンドを西側に建設する」という原則に加えて、具体的な数値(傾きが-45度~+30度)が記載されていました。
この数値から見ても、日本の多くのスタジアムは、理想的な向きの範囲内でした。
海外の有名なスタジアムでも、理想的な向きではないスタジアムもあり、驚きました。
yas-miki