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ロシアの14秒から日本サッカーへの提言 ~ロストフの14秒~
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カタールワールドカップ前に、前回のロシアワールドカップを振り返る意味で、ベルギー戦を取り扱った本を読みました。

テレビ番組の書籍化であるため、一般層にも分かりやすい内容で、とても読みやすかったです。

 

14秒のプレーで、日本人の気質まで踏み込んだのは、興味深い指摘でした。

改めて振り返っても、今後似たような状況が起きた場合の正解を出せない難しいゲーム運びだったことを痛感します。

 

 

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購入のきっかけ

 

本書は、2018年の年末にNHK総合とNHKーBSで放送された同タイトルのドキュメンタリーをベースに書かれています。

センセーショナルなゴールシーンの裏にある、それぞれの選手の思惑や文化的気質を取り上げていて、とても興味深い内容でした。

 

その放送を観ていましたが、2022年のワールドカップ直前ということで振り返りたくなり、購入しました。

 

惜しむらくは、同時期にNHKーBSで放送された西野さんと岡田さんの対談番組『激白!西野朗✕岡田武史〜サムライブルーの未来〜』について触れられていないことです。

そちらの対談も示唆に富んでいたので、本書に深みを与えられるのではないかと思いました。

 

対象読者

 

サッカーワールドカップは、世間の関心が比較的高いと思っています。

そしてロシアワールドカップのラウンド16、ベルギー戦も注目されていたと記憶しています。

 

【YouTube】Belgium v Japan | 2018 FIFA World Cup | Match Highlights

 

調べてみると、AM2:45からの放送にもかかわらず、平均視聴率は30.8%瞬間最高視聴率42.6%(ともに関東地区)で、とても高かったようです。

未明のベルギー戦、平均視聴率30.8% サッカーW杯

 

注目度の高い試合のラストプレーを深掘りした本ですので、サッカーファンでなくとも親近感を持って読めると思います。

ピッチでプレーした選手のインタビューがテンポよく進んでいます。

 

本書の終盤にも、

放送後、目の肥えたファンたちばかりでなく、ふだんあまりサッカーを見ない視聴者からも、大きな反響が寄せられた

と書かれていて、一般層にも分かりやすい放送内容だったと言えます。

 

映像であるテレビ番組を文字化していますので、テレビ放送より分かりやすさは落ちると思いますが、平易な言葉でサッカーが語られていて、とても読みやすい本です。

ワールドカップ前に、日本サッカー史の出来事を振り返っておくには、もってこいの本だと思いました。

 

ポイント: 2-0のリードを奪って聞かれる「これでいいですか?」

 

ベルギー戦の重要局面には、2-0でリードしたシーン試合最後のコーナーキックからの14秒が挙げられています。

本書では、『2-0でリードしたシーン』は、その後の時間経過とともに、序章に取り上げられています。

 

サッカーでは2点差のリードは危険なスコアという言葉が使われています。

 

前述の西野さんと岡田さんとの対談番組『激白!西野朗✕岡田武史〜サムライブルーの未来〜』の書き起こしで引用します。

 

それを立て続けにこう入って、(後半)10分で2-0になって。

これはね、自分もやっぱりこの時に、まぁ、選手たちも、ものスゴい興奮状態でベンチにみんな駆け寄ってきて

で、長谷部がやっぱり「どう?これでいいですか?

これでいいんだ、これでいいんだっていうね。

そういう指示しか自分が出してないのがね。今思えば、本当に中途半端な指示だったなと思うわけね。

 

後々、結果論も込みで、ああすべきだった、こうすべきだったと言うことは簡単です。

 

  • ワールドカップの決勝トーナメント
  • 対戦相手は格上と目されるベルギー
  • 前半から互角以上の内容
  • 残り時間40分ほどで予期せぬ2点リード
  • 現在とても良い雰囲気

 

この状態で長谷部キャプテンにこれでいいですか?と聞かれます。

 

西野監督の立場になった場合に、どう指示するでしょうか?

「そのまま行け」という指示は悪くなく、自分も同じように言うだろうなと思います。

 

本書でも、酒井選手、吉田選手の言葉で、判断は間違っていなかったのでは?という見方を紹介しています。

そのインタビュー内容を読んでいても、「そのまま行け」という指示は納得できる判断だったと感じます。

 

しかしながら、結果的にはベルギーに敗退してしまったので、正解の判断は「そのまま行け」ではなかったようです。

 

今回のベルギー戦は、将来も日本サッカー史の大きな出来事として語られるでしょう。

では次回強豪相手に2点差のリードを奪った場合(カタールワールドカップで訪れるかもしれません)、その時の監督は、チームはどのように試合を進めるのでしょうか?

 

 

ポイント: 後半ロスタイムのコーナーキックで勝負する?

 

『コーナーキックからの14秒』のゲームプランとして、コーナーキックで勝負をかけ過ぎたという批判があるようです。

本書でも、名将カペッロさんやルカク選手の言葉で、カウンターのリスクにより注意を払うべきだったと紹介しています。

 

日本は、過信していたと思います。

この試合に勝てると思ってしまったのだと思います。

残念なことに、この過信がすべてを台無しにしてしまったのです。

 

逆に日本は、試合終了の瞬間まで、満足してはならなかったのです。

リスクがあるのなら、前もってリスクの対応策を考えなければなりません

とくに監督が、カウンター攻撃されることのないようにしなければならなかったのです。

 

一方で、ピッチに立っていた選手やザッケローニさんは、ゴールを狙ったコーナーキックを支持しています。

 

自分も、延長戦に入ると負ける、なのでコーナーキックでサヨナラ勝ちを狙うべきと考えていました。

同時に「デザインされたセットプレーだと面白い」とも考えていました。

 

 

実際は、ある意味で「よくあるセットプレー」を選択した結果、GKにキャッチされ、高速カウンターに繋がってしまいました。

 

先ほどの2点差リードのゲームプランのように、次回同じ場面がきたらどうするのか?に興味があります。

 

ベルギー戦から学んでいないと言われるでしょうが、またサヨナラ勝ちを狙うのかもしれません。

或いは、延長戦に持ち込むプレーを選択するかもしれません。

 

ただロシアワールドカップでは、一か八かのコーナーキックを蹴らされたと言えるのではないでしょうか?

そしてコーナーキックのパターンを研究されていて、高速カウンターを受けてしまった…

 

カウンターを受けている場面の分析でも、長友選手や長谷部選手の対応には、やるべきことはやったベストな選択だったとしています。

 

本書のオシムさんの言葉を引用します。

 

もっとも多くの選手が関わり、しかも関わった選手全員が、自分のやるべきこと、理想的なプレーをしました。全員がしかるべきタイミングで走り出し、しかるべき場所にいたのです。あのカウンターは、日本には防ぎようがありません。

 

実際にプレーを見返しても、これ以上のプレーは難しいと感じています。

つまり将棋で詰まされるが如く、守備の動きが決められてしまい、その穴を突かれていったといった印象でした。

 

土壇場でミスなくプレーできることが、世界のトップとの差と言えるのかもしれません。

 

 

ポイント: 14秒が伝える日本人の気質

 

本書では、カウンターを故意にファウルで止める選択肢がありましたが、故意にファウルで止めるプレーは日本人の気質に合わないことを指摘しています。

再度、本書のオシムさんの言葉を引用します。

 

日本人は誇りが高いことで知られており、気質としてラフプレーを好みません

何しろサムライなのですから。

確かに、ああいう場面ではファウルをすることが賢いやり方でしょう。

失点せず、よって負けずに済んだでしょうから。

もし意図的にファウルを犯してしまえば、論争になったはずです。

(中略)

国民性や育ちからして、そういう対応は日本人には合わないと思います。

日本人の考え方や態度、人生観などに反するものだと思います。

 

各国のサッカーは、それぞれの国民性や文化に影響を受けているという主張は、よく見かけます。

この主張は、サッカー先進国を指して使われることが多いと思います。

 

しかし、日本に対しても、その主張が当てはまるとしていて、とても納得感の強いです。

 

前例のないポーランド戦の時間消費も、大きな議論を呼びました。

スポーツマンシップ教育というワードが使われていましたが、つまるところ日本人の気質に合わなかったのでしょう。

 

マリーシアプロフェッショナルファウルがサッカーの専門用語に感じるのは、高潔とも言える日本人の気質が理由だと思います。

 

前述のコーナーキックで点を取りに行った選択についても、自分は、潔く散るソメイヨシノに重ねて、良しとしてしまうのかなとも思います。

 

また日本人の気質として、悲観的な見通しの方が結果が出やすい(=楽観的な見通しの方が悪い結果になりやすい)ようです。

 

NHKーBSで放送されたロシアワールドカップ事前番組での記憶です。

メキシコワールドカップのアジア予選あたりからの日本代表の歴史を振り返る番組構成でした。

 

重要な試合、且つ勝てるのではないか?という楽観的な見通しの試合で結果が出ないことを振り返っていました。

 

  • アメリカワールドカップ予選のイラク戦 ← ドーハの悲劇
  • 日韓ワールドカップのトルコ戦
  • 南アフリカワールドカップのパラグアイ戦

 

個人的な印象では、近年のワールドカップでも、ドイツワールドカップ、ブラジルワールドカップは楽観的な見通しで予選リーグ敗退。

南アフリカワールドカップ、ロシアワールドカップは悲観的な見通しで決勝トーナメント進出で、同様の流れなのかな?と思っています。

 

まだサッカーの強豪国とは言えない立ち位置ですので、覚悟を決めて割り切った戦い方をしないと結果が出ないのかもしれません。

 

『アジア仕様のサッカー』と『世界仕様のサッカー』の使い分けの是非が問われる時期だと思いますが、それと同じか?それ以上に割り切り』というメンタルが重要だと感じました。

 

そしてワールドカップが終わると、「ここが上手くいった」という意見・記事よりも、ここが世界との差」という意見・記事の方が、よく目にする記憶があります。

 

本書も、ただ「ベルギーがすごかった」という話で終わらないので、そういった主張の一種と捉えることができます。

そういった主張が好まれるのは、反省点・改善点を見つけて、対策を実施するサイクルを回すことに、日本人は長けているからかもしれません。

 

また、以前、日本サッカーの強みは草の根の指導者だという意見を聞いたことがあります。

その時々の課題に対して、日本中の指導者が取り組むため、日本サッカーの成長に繋がるという論調で、非常に説得力がありました。

 

日本は、近年では急速に力をつけた国の1つだと思いますが、そういった日本人の気質も大きな理由だと思っています。

 

一方で、本書のリトバルスキーさんの言葉を借りると、ネガティブな一面もあるようです。

 

ヨーロッパ人と違い、自分のパフォーマンスを評価する際、日本人はあまりに自分に批判的すぎるのです。(中略)ヨーロッパ人はポジティブな自己評価をする。それは、より大きな自信につながるのです。

 

上記のように楽観的な見通しな見通しを立てると、良い結果に繋がらないことを考えると、自信の持ち方が次の課題なのかな?と感じます。

そういった意味では、本書の役割は大きいと思います。

 

本書を読んだのは、2022年10月で、カタールワールドカップ直前です。

日本中が、何となく悲観的な見通しを立てているように感じていますが、どういった結果、戦いぶりになるのか?楽しみです。

 

yas-miki(@yas-miki

 

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